戻る
#03

「決済の組み込み」が切り拓くビジネスの新しい景色——Sansan×インフキュリオンの共創が示す、次世代のスタンダード

Sansan株式会社
取締役 執行役員 COO

富岡 圭

Kei Tomioka

株式会社インフキュリオン
代表取締役社長 CEO

丸山 弘毅

Hiroki Maruyama

Sansan株式会社 取締役 執行役員 COO 富岡圭

富岡 圭

Kei Tomioka

日本オラクル株式会社に入社し、上海やバンコクを拠点にグレーターチャイナ(中国、香港、台湾)、東南アジア、インドのマーケット開拓を担当。2007年にSansan株式会社を共同創業し、営業AXサービス「Sansan」の事業を指揮する。現在はCOOとしてSansanのほか、経理AXサービス「Bill One」、契約AXサービス「Contract One」事業を統括。2023年から、Sansan Global Pte. Ltd.のCEOに就任。また、2022年からは株式会社インフキュリオンの社外取締役も務める。

金融機能がプロダクトに溶け込むとき、ビジネスは何を得るのか。名刺管理からスタートしたSansanは、「Bill One」を進化させるなかで、その答えを体現してきた先駆者だ。Sansan取締役執行役員COOの富岡圭氏とインフキュリオン代表・丸山弘毅氏が、その意思決定の質と、決済を持つことで広がる市場の可能性を語り合う。

「コンセプト起点」の思考法——Sansanが決済に踏み出した理由

富岡

Sansanは2007年の創業当初から「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションを掲げてきました。名刺管理という切り口で、Sansanと個人向けのEightを続けてきましたが、創業10年を過ぎたあたりで、新しい事業の種をどう撒いていくかという議論を始めたんです。

そのなかで、経理部門のメンバーから自分の足元の課題を解決するためのアイデアが上がり、社長以下数名のメンバーで取り組んだのが、請求書受領そのものをなくせるクラウドサービスの「Bill One」でした。

請求書受領は名刺管理とは全く違う領域ですが、我々からすると実は共通項がある。アナログで、かつ会社によってフォーマットが異なる。デジタル化していく我々の強みを活かせる領域でした。

丸山

まさに、この「Bill One」で我々のブランドカード発行基盤「Xard」を採用いただいています。エンベデッドファイナンス(組み込み型金融)の事例として当時のSaaS業界ではかなり早かったですね。クレジットカード発行はどの段階で構想されていたんですか?

富岡

実は、カード発行自体は立ち上げ当初から描いていたというわけではないんです。

我々はサービスのタグラインをとても大事にしていて、「『なくせる』をつくり、全社の働き方を変える」というBill Oneのタグラインに沿い、もっとなくせる業務はないか模索をするなかで生まれたアイデアでした。

業務改善で少しずつ減らしていくアプローチも大事ではありますが、Bill Oneは「そのアナログな業務自体をなくせないか」という視点を大切にしています。

請求書受領の業務における「なくせる」に向き合っていたら、実は受領した請求書の支払業務も無駄が多いことも分かってきた。ここにアプローチできないか考えていたときに、カード払いで解決できるのではないかと。

そこからインフキュリオンさんにご相談させていただいて、その中でサービスへ組み込むという形になっていきました。

丸山

Sansanさんの掲げるビジョンやタグラインはとても強固ですよね。エンベデッドファイナンスに取り組むとき、「何を実現するサービスなのか」という問いはとても重要になってきます。

「何か金融サービスをはじめたい」「新たな収益源として期待できそう」といった形で導入をスタートしてしまうと、UXにも顕著にあらわれ、ユーザーに見透かされやすいんです。

Sansanさんはミッションやタグラインに基づいて考え抜いた先で「カード発行」にたどりついていて、ユーザーに対してもコンテクストにズレがない。

ここはSansanらしい、ビジネスの広がり方だなと感じます。

富岡

そうですね。最初から決済領域を新しく始めようというよりは、ユーザーの課題に向き合う中で少しずつ染み出してビジネスとして固まってきたというイメージです。

丸山

そこが重要なポイントです。我々も金融・決済のプロフェッショナルとしてこれまで様々な企業を支援してきましたが、エンベデッドファイナンスにおいては「目的」と「手段」が入れ替わってしまうケースがよくあるんですよね。

富岡

「目的」と「手段」ですか。

丸山

はい。エンベデッドファイナンスは本来、サービスの体験を良くするための「手段」のはずなんですが、サービス設計の段階で目的化してしまうケースが多いんです。

とにかく金融機能をユーザーに上手く使ってもらおうとする、どんどん支払いをしてもらうことに注力すると、本来のサービス体験と断絶し使い勝手が悪くなる。断絶すれば、ユーザーは単体機能だけにフォーカスするようになり、競合との差別化要素も弱くなっていきます。これが、我々がよく直面する「目的と手段の逆転」です。

大事なのは、金融機能を主役にするのではなくて、サービス体験の中に、金融体験をいかに自然に繋げていくか。ユーザーが「金融サービスを使っている」と意識することなく、気づいたら本来の目的を達成している。このスムーズさを作れるかが、最も重要だと思っています。

そういう意味で、SansanさんはBill Oneのサービスコンセプトに立ち返って徹底的に議論されていた。これが、ユーザーにとって自然な金融体験を実現できたキーポイントだったと感じています。

決済データが照らした「顧客の本当のペイン」——Bill One進化の裏側

富岡

「Bill Oneビジネスカード」は、2023年6月から提供を開始したのですが、実は、開始してみると想定とは違う発見がありました。当初はクレジットカードが広告費や通信費のような、比較的金額の大きな経費に使われるだろう、と想定していたんです。

でも、実際のデータを見ると、出張費用から備品購入費用まで、少額だけど数が多いような経費精算での利用が圧倒的に多かった。

理由は単純で、広告費や通信費のような経費はすでにインターネットバンキングの一括振込で完結していて、工数がそもそも少なかったんです。一方で立替経費精算は、大企業も含めて、いまだにアナログな運用が山ほど残っていました。

つまり、法人カードの本当の価値は「経費の立て替えという業務自体をなくすこと」にあったんです。

そのため、請求書受領サービスの一機能として始めた法人カード発行を、経費精算の課題解決に特化した「Bill One経費」というサービスへ再定義しました。

丸山

実際にビジネスをスタートし、そこで得た気づきからさらに進化させる。まさに新たな事業を始めるときのポイントですよね。

富岡

はい。Sansanは新しいものをゼロからつくるカルチャーなので、既に多くのサービスがある経費精算の領域には当初は参入するつもりがなかったんです。

でもカードの使われ方を見て気づいたのは、経費精算を効率化するためのソフトウェアはたくさんあれど、経費の立て替えという行為そのものをなくすアプローチではないということ。

従来の経費精算における「従業員が立て替え、領収書を出し、経理が確認をして月末に精算する」というプロセスにおいて、非効率の根本的な原因となっている「経費の立て替え」をなくす。

これは「Bill One」で請求書の受領自体をなくしたのと同様の発想です。データによって明らかになった本当のペインによって、さらにサービスを進化させることができました。

丸山

Sansanさんの場合、経費精算という成熟しきったマーケットを漠然と捉えるのではなく、既存の経費精算サービスでは解決しきれていない「ユーザーのコアなペイン」にフォーカスして徹底的に解決しにいった。

この視点の違いこそが、独自性の高い体験価値と強いニーズを見出せた理由なんじゃないでしょうか。

富岡

ありがとうございます。また、Bill Oneには「Bill One債権管理」というサービスもあります。

これまでお話しした「請求書を受け取る側」の話とは逆で、「請求書を発行する側」の課題を解決するサービスですが、ここは金融領域としてもっと広げられると思っています。

丸山

支払い側と請求側、両方からアプローチできるのはBill Oneならではの強みですよね。

富岡

そうなんです。請求書の受領側のお客様に加え、その取引先として、請求書を発行する会社を含めると約26.8万社の規模になっています。

ここでやり取りされるお金のトランザクションは、現在、年換算で約71兆円にのぼります。このネットワークをうまく顧客価値につなげていけないか、というのはずっと頭にあります。

丸山

面白いですね、それは次の進化も期待できますね。やっぱりエンベデッドファイナンスの最大の価値はデータにあるんですよね。

ひとつは、「誰が、いくら、どこで、何に使ったか」というデータを分析することで、顧客のリアルなニーズを把握し、サービスの改善や新たな事業機会の創出につなげていく。

もう一つは、そのデータを活用して新たにファイナンスサービスを始める。

決済データというのは単体ではなく自社事業にかかわるデータと融合したときに、はじめて付加価値が生まれる。Sansanさんであれば、与信であったり、強みである企業情報と組み合わせるという可能性もありますよね。

富岡

そうですね。与信は、このビジネスをやって改めて実感した、本当に大きなテーマです。ただ、かなり難しいですし、ノウハウもデータも一朝一夕には積み上がらない。だからこそ、そこに長年向き合ってこられたインフキュリオンさんの知見に、私たちも大いに期待しています。

丸山

ありがとうございます。我々としても、基盤を多くの企業様にお使いいただいており、決済という重要なデータを扱う立場にあります。それらを匿名化など適切な処理を経てしっかりと分析し、各社のビジネスに還元できる形にしていく。そうすることで、いわば「大きな頭脳」として、より多くの企業に価値を届けられると考えています。

自社の強みを守りながら、いかに「枠」を超えるか——変化の時代のパートナーシップ論

富岡

インフキュリオンさんをパートナーとして、金融領域にチャレンジしましたが、自社で担うのは、正直ハードルが高いと改めて認識しています。自力で対応しようとすると、システムや組織、人員まで大きく変えざるを得なくなる。

その結果、自社本来の強みがブレてしまうリスクがある。だからこそ、専門的なサービスや人材、ノウハウを持つプロフェッショナルとパートナーシップを結ぶことが最適だと思います。

プロフェッショナルとタッグを組むことで、自社のコアな強みや開発スピードを維持できる。そうすれば、一番フォーカスすべき「顧客体験や提供価値の向上」に専念できるんです。

丸山

この領域において、セキュリティや法令といった必要な要件を自社だけでクリアするのは、現実的に難しい。実装後もグローバルレベルで基準のアップデートが頻繁にあるので自社だけで追従していくとリソースが圧迫されてしまいます。

それから、AIの台頭でサービス開発速度は年々上がっているので、スピードも極めて重要。自社のコア業務に注力できる体制をいかにつくるかは変化の激しい時代を勝ち抜く鍵になると思っています。

富岡

そうですね。スピード感は重視しつつ、ただ一方で「守るべきところはしっかり気にする」という堅実な姿勢は両社で共通していて、それが相性の良さにもつながったんじゃないかと思います。

セキュリティだけを優先しすぎると、極端な話「AIの利用は禁止」みたいなことも起こりうるんですが、それではイノベーションは阻害されてしまいます。

Sansanは、名刺という個人情報を扱う会社として、創業期から「セキュリティと利便性を両立させる」というミッションステートメントもあり、安全性と利便性を両立させる絶妙なバランスをとても重視してきました。そうした価値観をパートナーと共有することも共創のポイントだと思います。

丸山

そうですね。今はまだ「セキュリティやコンプライアンスが最優先で、AIには慎重」という企業様も数多くいらっしゃるので、我々はそうした堅実な姿勢にも十分に理解しながらご支援をしています。

だからこそ、加速度的に進化するテクノロジーとどう向き合っていくかは、これからの企業が直面する大きな課題ですよね。

今はAIやデジタル通貨、ステーブルコインといった先進の議論をしている企業から、やっとクラウドを使い始めたという企業、いまだに紙と電話が主力という企業まで、3世代のテクノロジーフェーズが同時に存在しているような状態です。

我々はこの多様な状況下で、いかにイノベーションのスピードを落とさずに守るべきものを守るかが問われていると思っています。

富岡

我々の業界でいくと「AI」は間違いなくキーワードだと思っています。どの業界もこのインパクトからは逃れられないと思いますが、AIの台頭でエンジニアでない人がコードを書き、デザイナーでない人がデザインをつくれる時代になった。

だからこそ今意識するのが「Beyond(越境)」です。これからは個人も企業もこれまでの枠組みを「超えていく(越境する)」姿勢が極めて重要になると思っています。

自社が持つミッションやデジタル化の強み、たとえばソフトウェアとオペレーションの融合といった「ブレない軸」は大切にしながらも、AIを活用してこれまでできなかった領域へサービスや価値を広げていくことが大事だと思います。

また、Sansanが決済領域を始めるにあたってインフキュリオンさんとタッグを組んだように、今後は異なる強みを持つプロフェッショナル同士がパートナーシップを結び、共に枠を超えていくことも不可欠になると考えています。

丸山

「越境」ってすごくいい言葉ですね。まさに我々の「決済から、きのうの不可能を可能にする。」というミッションも、この「越境」そのものです。

「できない」と思われていたことを可能にしていくマインドはとても大切にしています。

Sansanさんは我々と創業期も近いですが、常に最前線でイノベーションに挑み続けてこられました。本日伺ったお話は、これからの経営における「機動力」の本質を教えてくれるものでした。越境を恐れない――その姿勢こそが、次世代のスタンダードになっていくのだと思います。

「なくせる」をつくり、全社の働き方を変える「Bill One」について

Sansan株式会社が提供するBill Oneは、請求書受領、経費精算、債権管理といった、さまざまな業務の課題を解決する、経理AXサービスです。請求書や領収書といった証憑書類が関わる業務プロセスに、AIとテクノロジーの力で「なくせる」をつくることで、経理部門だけでなく、全社の働き方を変えます。

「Bill One」サービスページ:https://bill-one.com/

次世代カード発行プラットフォーム「Xard」について

株式会社インフキュリオンが提供する「Xard」は、自社オリジナルのJCB/Visaカード(バーチャル/フィジカル)を、API連携により簡単かつ低コストで発行できる次世代カード発行プラットフォームです。多様な発行形態で、Fintech企業、金融機関、小売事業者、Webサービス事業者など、形態を問わずあらゆる企業のビジネスニーズに対応しています。「Xard」が提供する様々なAPI機能を自社のサービスに組み込むことで新しい体験を生み出します。

「Xard」サービスページ:https://infcurion.com/xard/

戻る

Next Post

Coming soon...

コンテンツは
順次拡充してまいります。
ぜひご期待ください。

Contact

お問い合わせ